※このインタビューは、2020年5月に中国語にて掲載された記事を日本語版として再編集したものです。
----まず紺野アスタ先生より中国のファンの皆さんに簡単な自己紹介をお願い致します。
紺野:紺野アスタです。日本でノベルゲームのシナリオライターをしています。時々、ライトノベルや他の分野の仕事もしています。
----紺野先生は昔ネットで連載小説を執筆なさってたといった噂を聞きましたが、先生はいつから物書きになっていったんでしょうか? またどういったきっかけで美少女ゲーム業界にいらっしゃったのでしょうか?
紺野:学生の頃からストーリーを作る仕事がしたいと思っていて、小説を書いたりしていたら、とあるゲーム会社から誘ってもらい、美少女ゲーム業界に入りました。それまで美少女ゲームをほとんど遊んだ経験がなく、業界に入ってから色んな事を勉強しました。その後、フリーランスとして独立し「紺野アスタ」名義で仕事をするようになりました。今はFrontWingに所属しています。
----紺野先生はシナリオライターとしてデビューされたタイトル「夏の雨」で既に企画担当をされ、また萌えゲーアワード純愛部門の金賞も受賞されましたね。こんなに素晴らしい実績を得られて、当時のご感想を少しお話いただけますか?
紺野:厳密には「夏ノ雨」以前からシナリオに関わる仕事をしていましたが、その頃は自分が賞を貰えるような作品製作に関わる事ができると思っていなかったので、驚いたし、とても光栄でした。
「夏ノ雨」が「この大空に、翼をひろげて」につながり、「ATRI」につながっています。あそこから全部始まったんだと思うと、とても感慨深いです。
----先生の代表作「この大空に、翼をひろげて」はPULLTOP(プルトップ)で初企画担当としてメイン執筆にもご参加なさってた作品です。当時先生は一度メインライター役をお断りされるつもりだったといった話がありそうですが、その辺について少々お話を頂けますでしょうか? また、実際にご担当なさった後、お気持ち的に何か変化がありましたか?
紺野:詳しい事までよくご存じですね。
PULLTOPは非常に評価の高いゲームを作っていて、ブランドイメージも統一されていました。私には荷が重いと感じて、一度は依頼を断ろうとしました。
ディレクターのYowさん(ATRIの演出担当でもあります)と会って話を聞き、彼がやりたがっているテーマを聞いて、「この真っ直ぐな青春ストーリーを一番上手く書けるのは私だ」と思い、依頼を引き受ける事にしました。
あんなに自分の全てを出し切ったのは、あの時が初めてです。碧や小鳥たちに引っ張られて、私もいつもより高く飛べた気がします。
----「この大空に、翼をひろげて」、「見上げてごらん、夜空の星を」また「空と海が、ふれあう彼方」の3作品では、どれも大量の専門知識がたくさん出てきますね。例えば滑空機の制作や天文観測と潜水など諸々でしょうが、一般の学生生活になかなか触れなれない領域なので、こういった経験は先生ご自身が実際にも体験されたことありますか?
紺野:飛行機も天文もスクーバダイビングも小笠原諸島も、実はまったく知識がない状態から企画をスタートさせています。その後、取材をして体験をしたりもしました。知識をただ羅列するのではなく、私が取材や資料から学んでいく中で面白いと感じたり、ワクワクした気持ちを、主人公たちを通じて読者に伝えられるように書きました。
----今回の新作「ATRI」も同じ、体験版には主人公と仲間たちが一緒に水力発電機を作るシーンがありましたね。この内容を見ると「あぁ、やっぱり紺野アスタ先生だ」という気持ちに思わずなります(笑)。先生はご執筆なさった作品がいつも専門知識にふれ、理科やものつくりの内容がよく出てきますが、「お話しながら専門知識をだんだんと紹介していく」といった書き方について、お考えを少しお話できますか?
紺野:私の書くストーリーは、日常描写を中心とした地味なものなので、何かプラスアルファがほしい。専門知識で知識欲を刺激する手法は、私の作風を邪魔する事なく、面白さをプラスしてくれます。
理系のネタが多いのも、作風との相性がいいからです。物語を通じて体験する事で、グライダーや天文、発電機など無機質な物に情緒が宿っていると感じる時があります。そこに、とても新鮮な感動があると私は考えています。
----「ATRI」のモチーフについて、「失ったものを取り戻す」の物語だとおっしゃったような気がしますが、この言葉の意味を具体的にご説明いただけますか? その上宜しければ、先生が思う「ATRI」の魅力所(見せ所)も伺わせていただければ何よりです。
紺野:主人公の夏生は多くの物を失っています。その象徴が右足。かつて当たり前にできていた事が、二度とできなくなるというのは、想像しているよりずっと辛いはず。
そんな彼が出逢ったのは、ロボットの少女・アトリ。
アトリは夏生のナイーブな部分にズケズケと踏み込んできます。でも、それが心地いい。開き直って彼女に甘える事で、夏生は自分が本当に欲しかった物が何なのか気付かされる。
アトリによって救われた夏生は、今度は自分が彼女を救いたいと思うはず。でもその救いは、人である夏生の考える救いと同じとは限らない……。
二人の行く末がどうなっていくのか、本編をプレイして確かめてみてください。
----今回のANIPLEX.EXEプロジェクトについて、日本のノベルゲームはSTEAMで同時発売、しかも最初から中国語付きの例は滅多に少ないですね。お陰で中国のファンにも言葉の壁なくいち早く紺野先生の作品を触れますが、これにについてどう思いますか?
紺野:中国で日本のノベルゲームのファンが、もっともっと沢山増えてくれると嬉しいので、同時リリースの試みはとてもよいと思います。発売したら、言語の壁を越えて一緒に盛り上がってほしいです。感想を沢山投稿してください!
----紺野先生は撮影とボードゲームがお好みだと聞きましたが、他にはどんなご趣味をお持ちでしょうか? また先生のお仕事に何か影響を与えられたことがありますか?
紺野:私の事を本当によくご存じですね。嬉しいです。
趣味から受けた影響は沢山あります。カメラからは観察力、表現力、季節を感じる心、カメラの歴史や技術の面白さ。ボードゲームは心理戦の楽しさ、独特の世界観など。
最近はVTuberにハマってます。ライブ配信特有の突発的な発言や行動は、意外性があってとても面白いです。ホロライブのさくらみこさんにATRIの体験版実況をしてもらえたのは、とても光栄でした。
----先生は昔のインタビューでご自分が一番なりたい職業は小説家といったお話がありそうですが、その理由は伺わせていただければと思いますね。また小説とゲームシナリオは同じく文字で表現させるかと思いますが、実際お話を執筆されることについて、その両方の違う所は何でしょうか?
紺野:子供時代に面白い小説を読んだ後、しばらくその世界から戻ってこられなくなるような体験を何度もしました。なので、漠然と「小説家になりたい」と思うようになりました。
ゲームシナリオは絵と音があるのを前提としていて、小説のような書き方も、映像作品のような見せ方もできます。表現の幅が広いです。
もう一つの違いは、ストーリーの分岐。ここが小説との一番の違いです。
ATRIはCGや演出のレベルが非常に高いです。朽ちていく世界で、生き生きと動くアトリが本当に可愛くて、夏生が夢中になるのも当たり前だと思いました。
----今後のお仕事動向やスケジュール予定などを少しお話頂けますか?
紺野:私が所属するFrontWingが制作しているソーシャルゲーム「グリザイア・クロノスリベリオン」のシナリオチームに参加しています。
それから、PULLTOPの新作「あの日の旅人、ふれあう未来」が近々リリース予定です。こちらは、「空と海が、ふれあう彼方」と同じ小笠原諸島が舞台で、小さなラジオ局のストーリーになってます。ラジオを聴くのも、私の趣味の一つです。
海外展開の事は私には分かりませんが、もし中国でプレイできるようなら遊んでほしいです。
----最後に中国大陸のファンの皆さんに一言お願い致します!
紺野:小さい頃から映画やマンガ、食を通じて、中国の文化に触れてきました。(三国志や水滸伝が大好きで、中国で制作されたドラマ「三国志 Three Kingdoms」や「司馬懿 軍師連盟」も観ました!)
ですが、まさか私が書いたストーリーを中国の人たちに読んでもらえる未来があるなんて、あの頃は想像もしていませんでした。
ATRIは実力と実績のあるスタッフが集まって制作されたゲームです。楽しんでいただけると嬉しいです。
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